宇月原晴明『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュノス』

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫)

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫)

 2002年9月購入。3年の放置。第11回ファンタジーノベルス大賞受賞作は「織田信長は両性具有」というとんでもない設定でもって描かれた伝奇物だ。このぶっとんだ設定を使うに当たって持ってきたのが古代ローマの皇帝ヘリオガバルスとの共通点で、さらにその二人を比較するのが1930フランス代の詩人アントナン・アルトーという凝った構成をとっている。信長以外の歴史上の人物に馴染みがないので、はっきりいって知識を追うので精一杯という感はあったが、伝奇小説ならではのハッタリの効かせ方が抜群で知識不足ではあってもそれなりに物語世界にのめりこむことができた。後半部分で信長は歴史上のある偉大な人物の行動を模倣するのだが、この部分は圧巻。しかし、ファンタジーノベルス大賞出身者の作品はレベル高いなあ。