桜庭一樹『推定少女』

推定少女 (ファミ通文庫)

推定少女 (ファミ通文庫)

 桜庭一樹作品を読むのは『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』に続いて2冊目になる。本書は『砂糖菓子〜』よりも前に書かれた作品だが、扱っているモチーフには共通する部分が多い。すなわち、思春期にある少女が大人との距離感に悩み、傷つく。そしてガール・ミーツ・ガールの小説であること。つまり2作は同様のテーマを扱っているといえよう。
 ただ、同じテーマを用いながらも決定的に異なる点がある。少女が大人に立ち向かうにあたって、この『推定少女』では実際の武器――弓矢や銃、すなわち実弾を用いているのに対し、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』ではそのタイトル通り実弾ではなく(あくまで抽象的な意味合いにおいての)砂糖菓子の弾丸しか持ち合わせていないのだ。つまり、後者のほうが前者よりいっそう少女の無力感を表しているといえ、その分テーマは深みを増している。それはすなわち桜庭一樹という作家が作家としての深みを増したと言い換えることも可能だ。ここ最近の桜庭一樹ブームはここで見られるような作家の成長という裏づけがあってこそのものだと思われるが、他作品を読んでない以上そこまでは断言できず、ただ想像するにとどめておく。