黒田研二『阿弥陀ヶ滝の雪密室』

阿弥陀ヶ滝の雪密室 (カッパ・ノベルス)

阿弥陀ヶ滝の雪密室 (カッパ・ノベルス)

 2003年5月購入。2年半の放置。「ふたり探偵」シリーズ第二段。ルポライター向河原友梨の刑事である恋人キョウジは連続殺人鬼「シリアルキラーJ」の襲撃によって意識不明に陥ってしまう。ところが、キョウジの意識は友梨に憑依してしまう。本シリーズはこの「ふたり探偵」友梨とキョウジがJの絡んだ事件の謎を追うという形式をとっている。

 本書では新興宗教の教祖が殺害される事件と児童誘拐事件の二つの事件が発生するのだが、その事件の中に様々な要素がとりこめられており、読み手としては本を中途にして置くをあたわずといった気持ちにさせてくれる。意識不明のキョウジを襲った犯人の正体とは?とか、真っ二つにされたはずの教祖は実は生きていたのでは?とか、雪密室の謎とか、とにかく謎やそれに付随するトリックを盛り沢山でぶち込んだ作者のサービス精神が光る。

 ただ、ストーリー展開はややご都合主義。もっとも、それはスピーディーな展開を心がけたことの裏返しともいえるのだが。