殊能将之『子どもの王様』
- 作者: 殊能将之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/07/30
- メディア: 単行本
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この「ミステリーランド」に限らず、作者が子供向け(と限定するわけではないが、一応こういう書き方をさせてもらう)作品を書き上げる場合二通りの考えがある。ひとつは子どもに夢を与える健全な作品を提供するという考え、そしてもうひとつは子どもに現実というものを見せつけ、その現実を見つめるということを認識させるという考え方だ。殊能将之がとった手法は明らかに後者で、子どもの王様の正体と、それに対比するラストやりとり――「大人になったら何になる?」という母の問いかけに対するショウタの「大人になりたいな」という台詞は大人になるとはどういうことかを端的に表現しているといえる。いろいろと重いものを背負ってしまった少年だが、それによって明らかに少年は大人へと一歩近づいた。