藤岡真『六色金神殺人事件』

六色金神殺人事件 (徳間文庫)

六色金神殺人事件 (徳間文庫)

 購入日不明。発売時に買えず結構探し回った記憶がある。2003年頃か? 青森・津本村の東元家に伝わる「六色金神伝紀」。そこには宇宙開闢から大和朝廷成立までの歴史が記されているという。出張で青森を訪れていた江面直美は吹雪に遭遇したことにより津本村に迷い込むが、そこではちょうど「六色金神祭」が開かれようとしていた。
 祭りの最中、直美の眼前で起こる殺人事件は須らく「六色金神伝紀」の見立てになっていた。中には公演中に浮かび上がった挙句壁にめり込んだり、彗星のごとく炎上して宙を舞んだり、氷漬けになった部屋の中でその氷柱に閉じ込められたりと、不可能状況ここに極まりといわんばかりの状況で死体が発見されたりする。
 ここまでハッタリをかますと着地点は当然狭まってしまう訳で、謎解きは想定の範囲内のところに収束された。これは仕方のないところであろう。構成に気を使っているので単純に壁本とかバカミスとして片付けてしまうには惜しい。個人的には「六色金神伝紀」の胡散臭さとそれに絡めた事件がツボにはまり、楽しめた。傑作でもなくかといって駄作でもない、言うなれば怪作であろう。