加納朋子『てるてるあした』

てるてるあした

てるてるあした

 購入は今年の5月。買ったばかりだと思ってたのに積むことはや1ヶ月。親の夜逃げによって高校進学がふいになったあげく佐々良という田舎町で見知らぬ老女と暮らすことになった少女・照代が成長していく物語。とてもいい話で、読んでよかったという気分になれる。

 
 照代はさまざまなものを失う。冒頭でいきなり両親と別れ別れになり、数少ない自分の持ち物――目覚まし時計を自分で壊してしまい、吹きガラスのりんごを割られ、オルゴールを子供に壊される。それは過去の自分にとって大切なもので、だが、それらを失う代わりに別のものを手に入れる。古いが手入れされて蘇った自転車であり、麦わら帽子であり、そしてさまざま人たちの愛情……


 生きていくことは、大切な何かを失う代わりにもっと別な大切なものを得るということだ。さらにものだけでなく、大切な人を失い、そして得る事だってある。そうやって人間は成長していく。


 成長といえば、前作『ささらさや』で夫の幽霊に見守られる側の存在だったサヤが、今作では照代を見守る側の存在として描かれる。彼女も前作を経て成長したのだろう。