鮎川哲也『人それを情死と呼ぶ』
人それを情死と呼ぶ 鬼貫警部事件簿―鮎川哲也コレクション (光文社文庫)
- 作者: 鮎川哲也
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2001/07
- メディア: 文庫
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社会派全盛の時代に書かれた作品でありながら、「汚職」といういかにも社会派的な問題点をあくまで本格ミステリとして料理している。作家として本格一筋を貫き通した鮎川の矜持を感じる。もちろん、そういった時代背景を抜きにしても十分に楽しめる。読者に偽装心中を疑わせておいてそこからさらにひねりを加えるところなど、目の付け所に思わず感心。それまで描いてきた構図がきれいにひっくり返るのだから。そしてタイトル。一見平凡だが、読み終わったときに思わずうねってしまった。なるほど、そういうことね。