竹本健治『カケスはカケスの森』

 先月ブクオフにて購入。印象のみに頼った見解だが、「探偵小説」と「ミステリ」の差異は物語の幻想性・怪奇性の過多にあるのではないかと思う。それらも要素が強いものは「ミステリ」と呼ぶより「探偵小説」と呼んだほうがしっくりくる。


 そういう文脈から分類するに、竹本健治とは「探偵小説」作家であるといえよう。竹本は伝説のデビュー作『匣の中の失楽』によってその「探偵小説」性を十二分に発揮したが、本書『カケスはカケスの森』その『匣の中の失楽』の作者に相応しい「探偵小説」だ。過去に死んだ家庭教師先の少女、ベルギーの古城、少女の幽霊の噂、魔女狩りを描いたタペストリー、不吉な言葉を告げるの神父、カリヨンの音色……これら作中に登場する道具立ての絶妙さ。


 もちろん道具立てだけでは小説は成り立たない。そちらの出来も申し分ない。東京創元社あたりで復刊してくれないかなあ。