乾くるみ『林真紅郎と五つの謎』

林真紅郎と五つの謎 (カッパ・ノベルス)

林真紅郎と五つの謎 (カッパ・ノベルス)

 2003年8月購入。約2年の放置。妻を亡くしたことがきっかけで法医学者としての仕事を辞めた林真紅郎の周囲で起きる事件の数々。コンサート会場のトイレで倒れる女性、駅の階段から落ちた外人と紛失したカメラ、友人の妻の死と手切り魔の関係、過去に作った忘れ去られた暗号、雪密室での死体……これら五つの謎を解き明かす推理法は、バラバラに見える謎すべてを脳裏でシンクロさせること。真紅郎だからシンクロって、鯨統一郎か、あるいは清涼院流水かよ。


 本作品は、推理をすることによって事件がややこしくなったり、推理を間違えた結果事件が解決したりと面白趣向が凝らされている。ひどく漠然とした言い方になるが、この作品は本格のフレームの枠をはみ出していない。はみ出していないがしかし、そのフレーム自体がゆがんでいる。そんな印象を受けた。