戸松淳矩『剣と薔薇の夏』

剣と薔薇の夏 (創元クライム・クラブ)

剣と薔薇の夏 (創元クライム・クラブ)

 2004年5月購入。6年半の放置。19世紀半ば、日本からの使節団を迎えたアメリカのニューヨーク。新聞記者のウィリアム・ダロウは元漂流民の日本人ジューゾ・ハザームの協力を得てサムライ使節団の取材を始める。それと時を同じくしてニューヨークでは不可思議な殺人事件や失踪事件が相次いでいた。ダロウはこの事件の謎も追い始めるのだが……
 事件の<謎>それ自体よりも当時のニューヨークという街の描写やサムライ使節団の様子が読み応えがあり、歴史小説の一種として非常に楽しめる一冊だ。ミステリレベルでも日本人とアメリカ人という人種の違いが一つのポイントとなっているが、同時にアメリカ内部の人種の違い、すなわち黒人・白人の対立も絡んできており、当時の背景を上手くミステリとして活かしているといえる。