東野圭吾『レイクサイド』

レイクサイド (文春文庫)

レイクサイド (文春文庫)

 2006年2月購入。4年8ヶ月の放置。息子の中学受験のために開かれた別荘での勉強合宿に妻ともども参加した並木俊介のもとに、愛人の高階英里子が訪れた。ところが英里子は俊介が別荘を離れていた合間に殺されてしまった。その場にいた妻の美奈子やお受験仲間の面々の話によると、美奈子による犯行だという。子供たちを守るために彼らは犯行を隠蔽しよとするのだが……
 犯行隠蔽を軸としたメインストーリーは事件の勃発から思わぬ方向に転がっていく中盤、そして衝撃のラストで結ばれるという形で、コンパクトかつ綺麗にまとまっている。加えて昨今のお受験問題とそれに絡む親子関係といった要素がこのメインストーリーに肉付けされており、本書を単純なサスペンスノベルでは終わらせていない。読む前から作品に高水準を求められる人気作家ではあるが、本書はその期待にしっかり答えてくれている。なお、読後の第一印象を限りなくネタバレっぽく表現するなら、「オリエント急行かと思ったらYの悲劇だった」である。