石持浅海『君がいなくても平気』

君がいなくても平気 (カッパ・ノベルス)

君がいなくても平気 (カッパ・ノベルス)

 2009年12月購入。10ヶ月の放置。水野勝の所属する会社と業務提携先で編成された共同開発チームによる商品開発が成功した。祝勝会が開かれたその翌日、チームリーダーが不審死を遂げる。死因はニコチン中毒で、犯人はこのチームの中にいる可能性が高い。そんな中、あるきっかけで水野は犯人に思い当たってしまう。その人物は同僚で恋人でもある北見早智恵であった。「殺人犯の恋人」として衆目を浴びることを嫌った水野は、早智恵が捕まる前にどうにか別れようとするのだった。
 自分の保身のために恋人を捨てようとする、という点がいかにも石持浅海っぽい倫理観だ、という形式での批判が浮かびそうではある。それを貫いてストーリーを進めていけば、石持らしい特殊形式でのミステリということで従来通りの作者評を得られてことであろう。しかし実際はそうはならず、案外陳腐な地点に着地する。ファンにとっては肩透かしの感が生じるのは否めない。また、そこから先が作品の肝であるとはいえ、犯人指摘に至る過程が極めてルーズである。そして肝心の先の展開が先述したとおりだ。ミステリ的にはフーダニットよりもホワイダニットであるのだが、後者の部分での驚きも少なく、結果、全体を通してひどく平板な印象になってしまった。