山田正紀『白の協奏曲』

白の協奏曲(コンチェルト)

白の協奏曲(コンチェルト)

 2007年9月購入。2年11ヶ月の放置。警察直属の情報班を作るために都心での暴動事件をでっちあげ、都民を東京から全員退去させる、というパフォーマンスをしようとする動きがあった。中条茂の所属する貧乏交響楽団のメンバーたちはその企みの狂言回しとして利用される。M交響楽団は活動資金を非合法手段で得ており、その活動における手腕を見込まれたのだ。この企みに自身の出世をかけた状元紀彦警視は中条たちとは別に行動を起こす。また、中条たちに話を持ち掛けた女性には別の目論見があるようだ。かくして東京都民全退去作戦は始まった。
 無人の東京という状態を作り上げる、というコンセプトのもとで書かれた作品で、そのユニークな発想にふさわしいユニークなアイデアで作戦は遂行されていく。それ自体で十分に楽しいのだが、それぞれ思惑が異なる陣営の動きがどう絡んでくるのか、ということも物語に読者を惹きつける要素となっている。実行部隊が交響楽団員で、指揮者が作戦の指揮をとるという設定も面白い。目的が目的だけにかなり無理筋な展開ではあるし、その目的を達成するための真の動機に説得力が欠けるものの、物語それ自体の力強さで押し切っており、多少の無茶は目をつぶってしまいたくなる作品だ。