2009年9月購入。10ヶ月の放置。大河ファンタ
ジー<
氷と炎の歌>シリーズが有名なマーティンであるが、本書はファンタ
ジーではなくホラー色の強い作品を集めた短編集である。ピザが大好きなデブ野郎が見つけたおぞましいダイエット法「モンキー療法」。学生時代のルームメイトだったメンヘラおねえちゃんが訪ねてきて、そのメンヘラぶりによって語り手である男を恐怖に陥れる「
思い出のメロディー」。自作の登場人物が訪れてくるようになった作家、彼の胸中とその原因である背景を描いた「子供たちの肖像」。満月になると動物に変身する護符をめぐる小品「終業時間」。
洋梨形のキモイ男にストーキングされた女性の悲劇「
洋梨形の男」。大学時代のチェス部の仲間で、いじめられっ子だった男に復讐されそうになるSF譚「成立しないヴァリエーション」。以上の収録作の大半に共通するのが、恐怖譚をメインとしつつもその恐怖自体がユーモアに通じている、ということだ。この背反する二つの感情を絶妙のバランスで両立させてみた手腕は見事。訳文も非常に読みやすく、好作ぞろいの<
奇想コレクション>の中でもハイレベルな作品集といえる。