栗本薫『グイン・サーガ127 遠いうねり』

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

遠いうねり―グイン・サーガ〈127〉 (ハヤカワ文庫JA)

 2009年6月購入。1ヶ月の放置。前半はイシュトヴァーンによるリンダへの求婚の続き、後半はヨナとスカールによるミロク教の聖地ヤガ潜入の話となっている。作者は先日逝去されたばかりであり、必然的に読者の興味はスカールに向かうと思われる。この人物はノスフェラスに行った際に被爆し、死に至る病に冒された。自身の余命短いことを知るスカールがどう考えどう生きるか――きわめて短絡的であるが読み手がこのスカールに作者自身を重ね合わせ、そのことによって作者の死の間際の心情を読み取ろうとするのもやむをえないところであろう。しかし、あくまで作中のスカールはスカールとして存在し、作者の感傷が入り込む余地はない。代わりにあとがきで作者の心境は語られることになるのだが。
 本シリーズが未完で終わることは残念でならない。同時に、死の間際までシリーズを書き続けたことには敬服する。改めて、作者に対しご冥福お祈り申し上げる次第である。