倉阪鬼一郎『影斬り 火盗改香坂主税』

影斬り―火盗改香坂主税 (双葉文庫)

影斬り―火盗改香坂主税 (双葉文庫)

 2008年12月購入。7ヶ月の放置。収録中の六短編は、火盗改の役職に就く香坂主税が事件を解決する、という体裁のオーソドックスな時代物である。個性的な部下を引きつれ時に得意の剣術で相手と斬りあい、相談を持ちかけてきたか弱き町人に優しさを見せる――チャンバラと人情味という時代物のツボをきちんと押さえているので時代物ファンときっちり向き合った作品といえる。一方で、ミステリやホラーというジャンルで見られた倉阪らしさは極端に抑制されており、従来のファンのニーズには答えているとは言いがたい。