湊かなえ『告白』

告白

告白

 娘を事故で失った教師が生徒たちの前で告げた真実――愛娘の死は事故ではなく、ある生徒によって殺害されたのだという。具体的に個人名を挙げないものの、教師は残酷な手段によって復讐をするのだった。
 衝撃的な第一章から始まり、以後、復讐の対象にされた生徒やその家族、あるいはクラスメイトといった具合に視点人物を変えて事件とその復讐の顛末は語られていく。視点を変えて格人物たちの心中に踏み入っていることにより、いずれの視点人物も聖人君子とはいえない、多かれ少なかれ自己中心的なエゴを抱えていることが赤裸々に語られていく。その筆致は新人離れした堂に入ったもので、決して心地よい話でないのにもかかわらず、読むものの興味をぐいぐい引き込んでいく。
 各所で「イヤミス」という言い方がされているが、個人的にはゆとりがチョーシこいた挙句、大人からしっぺ返しを食らったり自爆したりするという展開は、「他人の不幸で今日もメシがウマい」すなわち「メシウマ小説」という昨今一部で流行の表現がしっくりくるような気がします。