桜庭一樹『GOSICK6 仮面舞踏会の夜』

 2006年12月購入。1年9ヶ月の放置。<ベルゼブブの頭蓋>と呼ばれる修道院からヴィクトリカを救出したその帰途、久城一弥とヴィクトリカは乗り合わせた列車で起きた殺人事件に巻き込まれる。乗り合わせた乗客は皆、<死者>や<公妃>といったような偽名を名乗っており、なにやらそろいもそろって訳ありのようだった。
 殺人事件の犯人は誰か、という謎のみならず、乗客たちの正体は何者か、という謎。作者は二重の謎を用意して読者の興味を引いていく。特に後者の謎の趣向は久城とヴィクトリカにとって、お互い以外の人物身元はまったく知れていないわけで、その人物たちには安易に気を許すことができないことになる。必然的に二人の絆が強まることを意味しており、本シリーズのテーマを強調することになっている。とはいえ、作者の筆致は執拗に二人の絆をアピールするようなことはなく、従来どおりのペースで物語を進行させている。シリーズが軌道に乗った故か、余裕と貫禄のようなものを感じる。