石持浅海『人柱はミイラと出会う』

人柱はミイラと出会う

人柱はミイラと出会う

 2007年5月購入。2ヶ月の放置。作品の舞台となっている日本は現実とは微妙に異なり、人柱の風習が残っていて、さらにはその人柱を生業にしている者もいる。その職業的人柱たる東郷直海が探偵役を務める。他にも政治家のブレーンとして黒衣が存在したり、お歯黒の風習が残っていたり、厄年には実際に災厄がみまったり、鷹匠が警察に協力したり、ミョウガによる信心が深く浸透していたり、役人は参勤交代を勤めたりと、作中では我々の住む日本とは違うエキゾチック・ジャパンの世界が繰り広げられている。そしてそんな変わった風習が事件を形成し、かつ、事件を解く鍵となっている。また、本書のワトソン役は海外からの留学生リリー・メイスが勤めているのだが、外国人だからこそ気になる(作中)日本の異質さを彼女が指摘することが、謎を解くのに大きく貢献することになる。本格ミステリで謎を解くためには発想の転換や視点の変化が求められることがあるが、この点を演出するに対してまさに外部の視点・異邦人の視点を用いた本書の設定は実に絶妙だといえる。