2冊まとめて。2006年7月購入。1年の放置。
春秋時代・斉の名宰相
管仲の生涯を描いた作品。世に名高い「管鮑の交わり」の故事は作品のラストに登場し、それ以前は若き日の
管仲と鮑叔の友情を中心に激動の時代に二人の流転する様が描かれている。それらのエピソードは作者の想像力が生み出した創作であるのだが、丹念に描写された二人の生き様が最後に「管鮑の交わり」の美しさを鮮やかに浮かび上がらせている。ただしそのエピソードの根底にある、いかにも
儒教成立以前の時代にふさわしい牧歌的な天、及び天命の概念はこの作者の同時代他作品に共通のもので、共通であるがゆえに作中人物は他作品の登場人物と似た思想を抱くことになってしまい、結果的に読者が登場人物から受ける印象はひどく似通ったものになってしまっている。宮城谷ファンの視点で見た場合、「管鮑の交わり」一点によって成立している作品であるといっても過言ではない本書自体の印象が薄くなってしまっているのが残念。