樋口有介『刺青白書』
- 作者: 樋口有介
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/02/21
- メディア: 文庫
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柚木草平シリーズの4作目は既刊3作と異なり、柚木の一人称ではなく三人称で描かれており、結果として読者はこの魅力的な探偵役の人物像を立体的に捕らえることが可能となった。事件自体は従来のものと同様被害者たちの過去が大きく関わっており、その点は変わらないのだが、視点人物が40間近のおっさんから離れ、主に女子大生の鈴女を中心にシフトしているため、青春時代を振り返る哀悼の思いは薄く、逆に生々しさが残っている。事件そのものの真相もそういった生々しさを濃厚に感じさせるもので、やるせない気持ちにさせられるのだが、ここも若い鈴女という人物を中心に据えたため、結末は前向きでみずみずしいものになっている。かように視点人物を変えたことが効果的に活きた作品であるといえる