上遠野浩平『酸素は鏡に映らない』

酸素は鏡に映らない (ミステリーランド)

酸素は鏡に映らない (ミステリーランド)

 2007年3月購入。1ヶ月の放置。小学5年生の健輔は公園で奇妙な男と出会う。オキシジェンと名乗るその男は謎の金貨を健輔に託すのだが、その際に奇妙な言葉を告げる「力が欲しいなら、それを探してみろ」と。健輔は姉の絵里香、そしてヒーロー崩れの俳優・守男とともに金貨の謎に向かい合うのだが……
 少年の冒険・成長あるいは挫折からの復活物語という王道テーマで進む物語は非常にテンポがよく、読んでいて小気味いい。また、各章の冒頭に書かれる特撮ヒーローもののエピソードが通低音として流れているが、これが意外なサプライズにつながっていく。これがテーマと絡みあい、なかなか味わい深い演出として効果を挙げている。全体として良作であるのだろが、世界観そのものがどうやら作者の他作品と密接に絡んでいるようで、単独作品としては若干不親切なつくりになっているようで、その点が非常に残念だ。