伊坂幸太郎『アヒルと鴨のコインロッカー』
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2003/11/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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登場人物が総じて何らかの「境界」にこだわりを持っているのが特徴。「男女の境界」をやすやすと突破し、のみならず「恋人の境界」も越えてかかわる女性尽くと性的関係を築く河崎、「人種の境界」を越えて日本人と付き合おうとするブータン人ドルジ、そんな彼と付き合う恋人琴美、善悪という「倫理的な境界」をあざ笑い、動物虐待を繰り返す悪人たち……作者はその「境界」読者に意識させることで、登場人物の行為を印象付けることに成功している。特に他人にあまりかかわろうとしない美女・麗子が一連の事件を経て自身の「境界線」を破り、他人とより関わるよう変わっていく姿は印象的で、さらにいうならラストで神を「境界」の内側に閉じ込めるシーンは強く読者の胸を打つ。そうした一連の読ませの技巧が光る一作だ。