篠田真由美『魔女の死んだ家』

魔女の死んだ家 (ミステリーランド)

魔女の死んだ家 (ミステリーランド)

 2003年10月購入。3年5ヶ月の放置。高い石の塀で囲まれた屋敷に暮らす「あたし」の母親は周囲の男性に魔女と呼ばれていた。あるときそんな母親がピストルで殺される。群がる男ども=「すうはい者」たち、あるいは一緒に暮らすばあややねえや、そしてあたし自身……犯人はいったい誰なのか?

 章ごとに切り替わる視点によるイメージ喚起が抜群にうまい。作者の持ち味である耽美・幻想的な雰囲気は「あたし」視点によるパートで存分に発揮され、あたかも母親は魔女であるかのような怪しげな印象をかもし出す。事件後の男性たちの語りでは、その母親の人物像が多角的に照らし出されて、この二つの切り口によって幻想と現実が交互に描写されていく。最後にミステリ的大技が一発炸裂するのだが、これも幻想―現実というラインを結ぶ一要素となっており、作品世界の構築という意味では一本筋が通っているといえよう。探偵役として出てくるあの人はファンサービスなのだろうが、この一本の筋という視点でみると蛇足のような気がする。