東野圭吾『白夜行』

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

 2002年5月購入。4年半の放置。1973年に起きた殺人事件の被害者の息子と容疑者の娘。二人のその後の軌跡を描いた東野圭吾の代表作。彼らの周囲に起きる事件数々、そしてそれらと彼・彼女の関わり合いとは……

 何を書くか、でなく何を書かないかと言う点において技巧を凝らした作品。詳細に語られる昭和後期の背景がそんな筆致に見事にマッチして、昭和史の一側面も浮かび上がらせている。重厚でありながらリーダビリティーも失わずにいる点等々、そりゃ多くの著作の中から代表作の呼び声も高くなろうと言うもの。


 ところで、本作品に限らず、東野圭吾はラストの閉め方――その語りのサジ具合が抜群にうまい。多くを語らず、かといって言葉足らずではない、そして読者に余情を抱かせる。読者にとって作品の評価はラスト如何に拠るところがそれなりに大きいわけで、そのラストの閉め方が絶妙であるということがこの作者の受ける高評価に大きく関わっているのではないだろうか。