京極夏彦『邪魅の雫』

邪魅の雫 (講談社ノベルス)

　前作『陰摩羅鬼の瑕』以来、実に３年ぶりに刊行された妖怪シリーズ待望の最新作。江戸川・大磯・平塚で発生する毒殺事件を縦軸、「名探偵」榎木津の縁談話を横軸として物語りは進む。「なぜ邪魅についての解説があまりないのか」「なぜ非関口視点なのか、また、なぜ青木や益田と言ったサブキャラクターにスポットが当たることが多いのか」作品の裏事情や作者の意図するところはYahoo!ブックスのインタビューにて語られているのでそちらを参照されたし。
　個人の世界の内/外を読者に徹底的に意識させる記述は、京極堂による最後の謎解き場面において効果的に機能する。この内/外の認識がをそのまま世間話という民俗学的タームにつなげているところなどは、個人的に非常に興味深かった。