辻村深月『冷たい校舎の時は止まる』上中下
- 作者: 辻村深月
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クローズドサークルものを扱った作品では、その形成が人為的なものであれば閉鎖空間を作った者=犯人、という構図が成り立つ。本書の場合特殊な設定だが明らかに人為的で、上記の構図が綺麗に当てはまる。したがってミステリとしての話の運び方は非常にシンプルかつスマートである。
ただし、本書の最大の魅力はそこにはない。本書は閉鎖空間に閉じ込められた少年少女たちの心の闇を丁寧に描いていることに力が注がれている。人間関係に悩む思春期の心情を扱っているわけで、昨今流行の青春ミステリとして注目すべき作品ということになるであろう。特筆すべきなのは、クローズドサークルを崩壊させることが登場人物の心の殻を破るという意味を持っている点で、これをミステリ的文脈とつなげてみると、犯人の特定→クローズドサークルの崩壊→登場人物の精神的成長というスムーズな流れが表出する。その点に注目してみると、本書はミステリの手順を青春小説の表現手法として活かした佳作であるといえる。