倉知淳『過ぎ行く風はみどり色』
- 作者: 倉知淳
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2003/07
- メディア: 文庫
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胡散臭い霊媒師、仲睦まじい家族たちの影に垣間見れる悪意、こういった要素を重苦しくせず飄々と、しかも軽薄でない筆致で描きあげたのは倉知ならではといったところ。特に、ラストシーンはお涙頂戴のノリだと鼻白んでしまいそうだが、しつこくなくさらりと書いているのは情感をどれだけ描写するのか、という点でのバランス感覚のよさが非常によく表れている。文庫で500ページ超ある作品だが、さくさく読めて長さを感じさせない。