西澤保彦『いつか、ふたりは二匹』
- 作者: 西澤保彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/28
- メディア: 単行本
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (52件) を見る
ミステリー・ランドに限らずいわゆる子どもにターゲットを絞った作品では主人公たる子どもの家族関係にスポットが当てられることが多く、この場合たいていは片親が不在であったり両親が不仲だったりというように何らかの問題を抱えている。こういった環境は子どもにとってはマイナスであり、そのマイナスを補ったり乗り越えたりすることで子どもの成長を描く――というのが少年少女文学の王道パターンといえる。本書もその例に漏れず、主人公智己の母親は再婚をしており、その結果女子大生の義姉と暮らすことになる。しかし、冒頭にそういった家庭環境が語られるのみで、以降両親は物語にまったく登場しない。「タック&タカチ」シリーズの書き手としてみれば歪んだ家族関係を描くのはお手の物であろうが、そういった面には一切タッチせずに物語は展開する。唯一、ギクシャクとはいかないまでも微妙に距離を感じる年の離れた義姉とのエピソードのみが語られる。こういった意味において、本書は単に西澤作品というだけでなく子ども向け作品という分野でも異質の作品といえる。
なお、純粋に西澤作品ということで考えてみると、上記のようなアプローチをとった結果、作者特有の毒が消されており非常に読みやすくなっている。子ども向けを意識した結果だろうか。