道尾秀介『背の眼』

背の眼 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

背の眼 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

 作家の道尾秀介は旅先の白峠村で不気味な声を聞く。その村では以前、子供の失踪事件が相次いでおり、そのうちの一人は頭部だけが発見されていた。声の主はその子供の亡霊なのか? 道尾は友人である「霊現象探求所」所長・真備庄介のもとを訪れ、事件の解明を乞う……

 横溝正史京極夏彦に代表されるように、日本の本格ミステリにはいわゆる日本的な世界――土地にまつわる因習・風俗・伝統・信仰などといった民俗的な要素――を扱うことが多くみられる。道尾の本作もその横溝―京極ラインというべき日本的本格ミステリの延長、あるいはその周辺に位置する。その意味で、ある種王道的作品ともいえる。ただし、本書はホラー的要素を多く含んでおり、本格ミステリが示す枠内からはみ出しているかため、日本的本格ミステリの正当後継者とはいいがたい。もっとも、そういったジャンル論を抜きに語るのであれば、良作であることは疑いない。

 しかし、キャラクターの設定・配置が同ラインに位置する先行作家たる京極夏彦の作品に被っているのは大きな減点。