法月綸太郎『怪盗グリフィン、絶体絶命』

怪盗グリフィン、絶体絶命 (ミステリーランド)

怪盗グリフィン、絶体絶命 (ミステリーランド)

 2006年3月購入。2ヶ月の放置。「あるべきものを、あるべき場所に」を信条とする怪盗グリフィンのもとに舞い込んだ「怪盗グランプリ」の招待状。そこから幕を開けるグリフィンの大冒険。メトロポリタン美術館所蔵のゴッホの自画像を盗み出す依頼に応じてみたり、カリブ海にボコノン島へ潜入しての人形奪取作戦に絡んでみたり……
 各所で好意的反応が見受けられる法月のミステリーランド作品だが、その評判に違わぬ良作ぶり。本書は読み手のスピード感をコントロールするかのように各章を細かく区切っている。そして章ごとに主人公グリフィンの立ち位置がめまぐるしく変わっていく。ピンチに陥ったかと思うと次の章ではそれを鮮やかに切り抜けてみたり。そしてそれを演出する伏線の巧みさはさすが。子供も大人も楽しめる、ミステリーランドのコンセプトど真ん中の作品だ。ただ、ど真ん中過ぎて逆に物足りなく感じてしまう気がしないでもない。読んでいて安心感はあり、言うなれば成績はオール五の優等生なのだが、安定しすぎている。部分的に一とか二の要素があっても五段階評価なのに十をつけたくなるような破格の物語が読みたい――というのは読み手側のわがままに過ぎないのはわかっていても主張みてみたりする。まあ、それだけ安定した面白さがある作品ということで。