石持浅海『水の迷宮』
- 作者: 石持浅海
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2004/10/20
- メディア: 新書
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石持作品の特徴として上げられる点に、物理的状況に拠らない一風変わったクローズドサークルというのがあり、本作でも「水族館」という舞台でそれが構成されている。本作に限らず状況設定の巧みさには感心させられる。
そしてもう一点、石持作品で特徴的なのが事件後の処理である。しかしこちらは状況設定のようにうまく機能していないように思われる。
以下ネタバレ気味に。
本書における殺人事件の犯人は最終的に刑事罰を受けることがなく、代わりに精神的な意味で重荷を背負うことになる。単純に犯人が捕まって終わりにしたくないということだろうし、あるいは犯人が逮捕される以外の罰せられ方もあることを示したかったのかもしれない。もちろん、それもありだろう。しかし、犯人の処分=逮捕という数式がごくごく一般的な意味で成立しているとして、本書のような処理が犯人の処分として等価たりえるだろうか。人によっては等価たりえるかも知れないが、はたして読み手を納得させられるか疑問だ。少なくとも、犯人がそういった道をとることに対して反対するものがいない状況になるだろうか。これは演出法の問題かもしれないが、どうもロマンとか感動とかといった方向にもって行こうとするのがあからさま過ぎるように思う。単純に犯人逮捕エンディングよりは面白いことは間違いないのだが。