マーヴィン・ピーク『タイタス・グローン』

 購入日不明。99年度の復刊フェアの帯が付いているのでその際に購入したと思われる。とすると6年以上の放置。この連休を利用して分厚い、海外の長編ものを読破しようと思い立ち、積読の山から本書に手を出してみた*1
 グローン伯爵家に待望の長男タイタスが生まれたことによって幕を開ける長編幻想小説ゴーメンガーストと呼ばれるその城に住む面々の数奇な運命が描かれているわけだが、そこの住人たちはいずれも一風変わっている――というか、狂気すら感じさせる。姉姫のフューシャ、王の双子の姉、料理人長スウェルターなどは荒木飛呂彦の漫画に出てきそうだ。
 そのような登場人物が物語をつむぎだしていくわけだが、メインとなるストーリーはスティアパイクの成り上がり譚だ。元来が台所の使用人に過ぎないスティアパイクはジュリアン・ソレルも真っ青の野心家振りを発揮してこの陰鬱な城内での存在感を増していく。
 という感じで第1部は終わる。物語長大さとゴシック名雰囲気に合わせた格調高い翻訳調の文体ゆえ決して読みやすいわけではないが、幻想小説醍醐味を存分に味わわせてくれる作品だ。その雰囲気をゆっくりと堪能しながら続編を読んでいきたい。
 なお、本書には作者ピーク自身の書いたイラストが添えられているのだが、それが作品の雰囲気を見事に再現し、読み手の作品に対する興味をそそること大であることを追記しておく。

*1:現段階で全3部作のの2作目すら読了の気配がない