島田荘司『摩天楼の怪人』

摩天楼の怪人 (創元クライム・クラブ)

摩天楼の怪人 (創元クライム・クラブ)

 2005年10月購入。半年の放置。1969年、ニューヨークのマンハッタン。摩天楼にそびえるセントラルパーク・タワーにて死に臨もうとする大女優が50年近く前の殺人事件の犯人は自分だと告白した。しかしその告白の内容は奇妙なもので、明らかに彼女自身には実行不可能なものであった。告白の席に立ち会ったコロンビア大のミタライ教授は事件の真相を探る……

 冒頭から数々の謎がてんこ盛り。「停電の15分間で34階から1階に移動してプロデューサーを殺害」「セントラルタワーの設計者の爆死」「連続する女優の自殺」「ビルのガラスだけがすべて割れ、壁は無傷」「ヒエログリフに書かれた内容」そして「「ファントム」の正体」。冒頭の謎を重視する作者らしい謎のオンパレードで一気に読者の興味をひきつける手法はさすが。そしてこれらの謎をきっちりと解明して物語を収束させて見せる豪腕ぶりも見事。やや冗長の感は否めないが御大の健在振りを確認させてくれる1作だ。