泡坂妻夫『写楽百面相』
- 作者: 泡坂妻夫
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/12/06
- メディア: 文庫
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登場人物に十返舎一九、葛飾北斎、蔦屋重三郎ら当時の文化人が続々登場する。これだけで期待大なのだが、筆を執るのが泡坂だ。この雰囲気は他の作家には決して作れないものであろう。情緒たっぷりの筆致は神田に生まれ、紋章上絵師を生業とした、いわば江戸情緒が作者自身に染み付いているからこそ出せるものだ。
作者の傑作ミステリ作品特有のトリッキーさはここでは見られないが、写楽という謎の人物を軸に据えた物語運びと背景となっている江戸の雰囲気、手品等の道具立ては抜群。雪密室のトリックのバカミスっぷりや最後の年表のオチなど稚気もたっぷり。
ミステリとしては弱いけど、これぞ泡坂という作品。いいなあ、こういうの。