シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』

 実はスタージョン初読みだったりする。で、各所の評判を見る限り、本書は入門に向いているようでほっと一安心。
 いわゆる「奇想」を扱った作品において、その「奇想」と「人物」の作中での扱い方は二つに分類できると思う。「人物」そのものに「奇想」の要素をぶち込む――すなわち、主人公を異形のキャラクターにしてしまうパターンと、もう一つは平凡な「人物」が「奇想」溢れるキャラクターや出来事に遭遇するパターンだ。本書に収録される作品はおおむね後者に属する。その最たる作品が表題作で、平凡な男女の出会いと彼らが遭遇した不思議な出来事、そしてそれよりももっと不思議なもの……「奇想」と「人物」の扱い方が抜群に巧い。近頃の一部でのスタージョンブームに迎合するようで癪なのだが、絶賛を以って本書を紹介しておきたい。