森博嗣『探偵伯爵と僕』

探偵伯爵と僕 (ミステリーランド)

探偵伯爵と僕 (ミステリーランド)

 2004年4月購入。およそ2年の放置。夏休み直前に新太は探偵伯爵と出会う。暑いさなかだというのに黒いスーツ姿で奇矯な言動を繰り返す伯爵に新太は興味津々だ。そんなある日、新太の親友ハリィが行方不明に。新太は伯爵とともに親友を探し出そうとするが……


 ミステリにおける探偵の役割といえば「謎を解く」ことにあるのはいうまでもない。本書においてもその大元の部分では通常のミステリとなんら違いはない。しかし一つユニークな構図を提供している。それは探偵=謎というものだ。物語冒頭から登場し、謎解きをするための捜査や推理を行う探偵伯爵。しかし、その伯爵の正体そのものは謎のヴェールに包まれたままで、友人の失踪事件が解明される段階になってようやく判明する。すなわち事件の謎が解かれたときに探偵の謎も解かれるという物語構造になっているのだ。

 ――などと感心することになるのだが、最後にさらにもう一仕掛けがあってそれに驚かされることになる。いやはや、油断なりませぬなあ。