桜庭一樹『荒野の恋 第2部』

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

荒野の恋 第二部 bump of love (ファミ通文庫)

 第1部から1年後。荒野の「恋」は第1部ではまだ漠然としたものに過ぎなかった。この「恋」という概念が徐々に具体化していくわけだが、この2部では自分自身が男性の「恋」の対象となる。荒野の理解において、これまでは「自分が誰かを好きになる」というのが恋であった。しかし、「自分が誰かに好かれる」という状況になったことにより、1部の時点では漠然としていた「恋」というものをより明確なものとして実感することとなる。
 このシリーズで桜庭は従来のように少女を書くのみならず、「恋」という概念を荒野という少女を通して多面的に描き出そうとしているのかもしれない。