鮎川哲也『偽りの墳墓』

偽りの墳墓 (光文社文庫)

偽りの墳墓 (光文社文庫)

 2002年12月購入。3年2ヶ月の放置。鬼貫警部シリーズのアリバイものだが、捜査によって事件の様相が変わっていくさまが面白い。始めは土産物屋の女房の自殺。さらに、保険会社の依頼で事件を調査に乗り出した調査員までもが殺される。これによって、夫によるそれが保険金目当ての殺人説が浮かび上がる。ところが、この調査員の周辺からさらなる容疑者が浮かび上がって……という具合だ。そしてその過程を描く作者の丁寧な筆致。捜査小説の魅力が十分に堪能できる1冊だ。