荻原規子『西の善き魔女Ⅴ 銀の鳥プラチナの鳥』

 2005年6月購入。半年の放置。文庫で第5巻と銘打ってあるが、本来のノベルズ版では外伝の2巻として刊行されたもの。主人公のフィリエルとルーンではなくアデイルにスポットを当てているために外伝という扱いだったのだが、文庫化にあたって時系列に沿った配置に替えた模様。
 前巻で南方の竜退治に出かけたフィリエル一行とは別にアデイルは東の隣国トルバートに向かう。さらに東にあるブリギオン帝国による進行の噂の真偽を探るのが目的だ。そこで待ち受けていたのは異教徒、亡国の王子、野心を抱く聖職者、そしてルーンに似た活発で魅力的な少年……。さらには危険な罠がアデイルに迫る。
 今巻はこれまでのフィリエルではなくアデイル視点での物語ということで、内容もそれに相応しいものとなった。すなわち、二人の少年少女の行く末を見守るものでなく、女王候補による王国の行く末を探る話が展開するのだ。そこには当然暗い陰謀が存在するのだが、明るいアデイルを筆頭とした女性キャラたち、そして本作に登場するティガという少年の存在が物語りに明るさをもたらしてくれている。明るいキャラクターたちは本シリーズの最大の魅力の一つでそれが効果的に機能したといえよう。