荻原規子『西の善き魔女Ⅳ 世界のかなたの森』

 2005年4月購入。9ヶ月の放置。北の果ての田舎、学園や宮廷といったように巻ごとに舞台を変える本シリーズだが、今回は南方での竜退治がメインとなる。竜騎士の称号得るべく旅立ったユーシスのサポートという名目で一行の後を追うフィリエルだが、真の目的は宮廷を去ったルーンの消息を求めることにある。
 全巻までに宮廷物語の王道を歩んでると思いきやそれを逸脱するという流れをたどってきた本シリーズ。今巻でも騎士物語の王道とも言える竜退治が話の主眼になると思いきや、そこを微妙に逸脱する。これまでに指摘したようにこのシリーズがフィリエルとルーンという二人の少年少女の成長を描くことに作者の視線が注がれているからだ。ただし、二人の少年少女の物語と思わせておきながら、世界の根幹に関わる問題がフィリエルの前に現れてくるあたり、前回に保留したセカイ系での読解が可能かどうかという疑問には否定的な答えが出てくる。このシリーズは二人の少年少女の物語であるが、その二人の関係性だけにとどまらず、二人と世界との関係をも描いている。シリーズ途中で言い切っていいものかどうかは迷うが、これは間違いないと思う。