歌野晶午『家守』

家守 (カッパ・ノベルス)

家守 (カッパ・ノベルス)

 2003年11月購入。2年以上の放置。作者曰く、「家をめぐる変奏曲」。短編5編を収録。
 女性の人形をひたすら作り続ける男と神隠しに会った少年の話「人形師の家で」。密室で窒息死した妻を殺した犯人とその妻に秘められた秘密「家守」。呆けてしまった老人の息子に似ているからということで息子のふりをすることになった男に訪れた災難「埴生の宿」。田舎の温泉地で起きた殺人事件の、田舎であるが故の意外な真相「鄙」。引っ越した先は以前に惨殺事件が起きた家だったと妻に語る夫「転居先不明」。
 本格ミステリならではの謎の提示―その解明という明確な形式を形成しながら最後に一ひねり加えた巧い構成の作品が多く、楽しめた。最後の「転居先不明」は、惨殺事件の起きた家という設定を思わぬ形で利用しており、プロバビリティの殺人ものの白眉といえる。