田中啓文『水霊 ミズチ』
- 作者: 田中啓文
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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民俗学者の杜川己一郎は新興宗教における神おろしを研究するためのフィールドワークにて渚由美という少女と出会う。彼の眼前で起きるポルターガイスト現象の原因は由美? 一方、由美の暮らす九州宮崎市付近の過疎村で湧き出たには恐ろしい副作用が。ひとたび水を口にした者は異常な食欲をあらわし、その後やせ衰え、死に至る。この異常事態にも関わった杜川は調査の結果イザナギ・イザナミ神話にたどり着く……
田中啓文の初期代表作。今と比べるとグロさは相変わらずだが、圧倒的にギャグが不足している。というか皆無。本作にギャグが必要ないのは自明のことだが、一抹の寂しさを覚えるのは、私が田中ギャグワールドにとらわれてしまっているからかもしれない。とはいえ、伝奇ホラーとしてすばらしい出来だ。特に、水を飲んだ者が襲われる奇病にはぎょっとさせられ、思わず自分のはらわたが暴れだすのではと不安を感じてしまう。まあ、こんな田中啓文もありということで。