東野圭吾『容疑者Xの献身』
- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/08/25
- メディア: 単行本
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という筋書きなのだが、作品の魅力は上記このミスや本ミス、あるいは各書評サイトで語りつくされている感がある。さらに某所での本格議論などもあり、本作に関してはいまさら云々しても仕方がないように思う。
一点だけ、しかも無茶な読みを承知で指摘しておく。湯川と石神の対決は最終的に湯川の勝利に終わる。勝負の分かれ目は石神が靖子に抱いた愛情を湯川が読み取った点にあるのだが、その背景にあるのはお互いの学者としての(石神は一応は一高校教師なのだが)専門の違いにあるのではないだろうか。すべてを数式で表し、それ以外の要素の介入を許さない机上の学問とも言える数学を専攻した石神に対し、湯川は実験によって机上の論理を実際に確かめる物理学者だ。殺人の隠蔽工作という世界でもすべて理屈で片付けようとした石神の計画は、自身の愛情という理屈で割り切れない部分で破綻する。一方湯川は実験による実世界での事象に重きを置いているがゆえに、理屈以外の要素まで読み解くことができた。仮に湯川が数学者で石神の専攻が物理だったとしたら、この物語は成立し得ないはずだ。