東野圭吾『予知夢』

予知夢 (文春文庫)

予知夢 (文春文庫)

 2003年8月購入。2年4ヶ月の放置。「探偵ガリレオ」シリーズの第2弾。同シリーズ第3弾『容疑者Xの献身』を読みたかったので、取り急ぎ前作である同書に手を伸ばした次第。子供の頃に将来結ばれるはずの女性を夢に見た男は17年後に実際その女性にめぐり合う話「夢想る」。別の場所で殺された自分の恋人が、殺された同時刻に自分の前に現れる話「霊視る」。孤独な老人の死後におきたポルターガイスト現象「騒霊ぐ」。絞殺された男と火の玉現象の関係とは?「絞殺る」。女の首吊り自殺を事前に予知したという少女の話「予知る」。以上5編。
 いずれもオカルト現象がらみの事件を「探偵ガリレオ」こと天才物理学者の湯川学が解き明かすのだが、一連の現象と科学とが密接に結びついてるわけではない。

 ミステリにおいて「理系」がキーワードとなったのは森博嗣の登場によってであることは間違いない。彼は『すべてがFになる』で1996年4月にデビュー。一方、『探偵ガリレオ』が1998年5月、本書『予知夢』が2000年6月。本シリーズの登場ははたして「理系ミステリ」ブームに結びつけてよいものか。科学知識に基づいて書かれた『分身』は1993年で森博嗣以前であるから東野自身に「理系」の下地があったのは間違いなく、単純に便乗とはいえまい。ただ、本シリーズの生まれる契機になったということは考えられよう。