有栖川有栖『虹果て村の秘密』

虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

虹果て村の秘密 (ミステリーランド)

 2003年10月購入。2年以上の放置。刑事を父に持つ少年・秀介は作家になるのが夢。作家を母に持つ少女優希は刑事になるのが夢。二人は夏休みに優希の母ミサトの別荘のある虹果て村を訪れるが、そこで殺人事件に遭遇する。
 事件の背景にあるのは高速道路建設をめぐる対立があり、こういった村の経済や自然保護など大人の問題をもってきている。少年少女探偵が取り組む事件としては不適当と思われるのだが、作品のバランスを崩さず、変に生臭くならずに書ききるのは作家の力量ゆえだろう。
 また、作中に登場する密室・クローズドサークル・ダイイングメッセージといった本格ミステリとしておなじみの要素がきっちりと投入されているので、本格ミステリ入門としてもってこいでもある。作者が本書をジュブナイル作品として意識して書いたのは明白だ。子供向けとしてどうよ? と思われる作品が多い「ミステリーランド*1だが、本書に限ってはそんなことはない。お子様にお勧めできる1冊である。

 それにしても、「ミステリーランド」で扱う作品には、舞台を田舎にしたものが多すぎるように思う。作者の世代にとって子供=田舎の風景が似合うのだろうけど、今の子供にとってその等式が成り立つかどうかは疑問だ。まだ前作読んでないのでこんなこと書くのは間違いのもとかもしれないが、都会の子供が都会で活躍する作品はないのだろうか。そっちのほうが読んでみたい気がする。

*1:もっとも、麻耶雄嵩によると、「子供にトラウマになるような作品」こそが「ミステリーランド」のコンセプトであるらしい