北森鴻『写楽・考』
写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉 (新潮エンターテインメント倶楽部)
- 作者: 北森鴻
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/08
- メディア: 単行本
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収録作は4つ。田舎の旧家に秘蔵された人形が無残に顔をつぶされた。その後起きた殺人事件との因果関係は? 冒頭の学生の間に広まる都市伝説めいたおまじないの謎をうまくリンクさせた「憑代忌」。湖に沈んだ鳥居に隠された意味とその調査中に起きたトラブルの因果関係を描く「湖底祀」。過去に調査した御厨家の祭りを再調査した時に見えてきた驚愕の事実「棄神祭」。謎の人物の書いた「仮想民俗学」という概念を書いた論文を軸に資産家の失踪事件と古物商の殺人事件とを描いた「写楽・考」。表題作にはゲストして冬狐堂こと宇佐見陶子が登場する。
このシリーズは那智の弟子にしてワトソン役の内藤三國の視点として語られる。ワトソン役の宿命として事件の解決に当たっては那智の引き立て役のポジションに終始する。だが、民俗学者として有能であるところがミソ。この分野に限っては(やはり那智に遅れをとるのだが)探偵としての資格を有する。