小野不由美『くらのかみ』

くらのかみ (ミステリーランド)

くらのかみ (ミステリーランド)

 2003年7月購入。2年以上の放置。跡継ぎのいない本家の後継者選びために親戚一同が集まった。大人たちが話し合いをしている間に子どもたちは「4人ゲーム」を始める。すると、いないはずの5人目が出現した。しかしその5人目が誰なのかはまったくわからない。その後の食事では毒が混入されるという事件が発生。
 毒を盛った犯人は誰か、そしていないはずの5人目は誰なのか――子どもたち(5人目=座敷童子も含む)は謎を解くために動き出すが……
 今まで何作かこのレーベルを読んできたが、子どもが主役で子どもが推理し、子どもが事件を解決するという意味で本作は(作品の完成度も含めて)王道中の王道である(田中芳樹『ラインの虜囚』も子供向けという意味で王道ではあるがミステリーとしては弱い、というか論外)。
 だが、舞台となる田舎の雰囲気はむしろ子どもではなく「かつて子どもだった大人」にこそ郷愁を抱かせる。さすがに今では田舎もそこまでではないし、こんな田舎は今の子どもにとっては異世界に近いのではないか、と田舎住まいの私などは思ってしまう。そういった意味では大人もターゲットに据えた作品でもあるのかな、と。