京極夏彦による
狂言と落語の台本集。収録作品は京極らしくすべて妖怪ネタとなっている。現代ではマイナーでしかも怖くもない妖怪
豆腐小僧をメインにすえた「
豆腐小僧」、狐と狸と山犬の化かし合いを滑稽に描いた「狐狸狸噺」、
死に神によって寿命を知ることのできる砂時計を見ることができるようになったダメ男の噺「
死に神」。以上3編が
狂言で、人に獲り付いた小鬼を祓うことによって寿命を延ばすことが可能となる能力を身につけた男の噺「
死に神remix」が落語。私は
狂言にも落語にも疎い人間なので細かいテクニックなどはわからないが、いずれの作品もうまくまとまっているなあ、といったところ。常々
京極夏彦という人は作家というよりも職人といったほうがその人の本質に近いように思っていたが、こういった伝統的なジャンルの作品を手がけ、そして小奇麗にまとめてしまうところをみると、改めてそのような印象を抱いてしまう。
また、狂言師の茂山千五郎による狂言の歴史をまとめた解説は簡にして要を得ていて非常にわかりやすかった。