桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

 話題の桜庭一樹に初挑戦。中学生山田なぎさの視点で二人の人物が描かれる。一人は転校生で有名人の父を持つ海野藻屑、もう一人は引きこもりの兄友彦。前者は父から過大なまでの干渉を受けており、後者は逆に引きこもりを甘受し好き勝手を許してもらえる母の保護下にある。両者は大人による干渉という点で両極端な位置に立っている。
 結果として過大な干渉を受けた藻屑は悲劇的な結果を迎えることとなるのだが、そこにあるのは子供は大人によって押さえらつけられた存在であり、決してそのくびきからは逃れられないという現実だ。
 だからこそなぎさは早く社会に出て自立することを望む。このあたりは思春期の少年少女を扱った小説としては王道といえるテーマであるが、結末の残酷さは出色ものだ。カバー折り返しの紹介文にいわせると「暗黒青春ミステリー」ということになる。
 だが一方で大人との距離が藻屑とは最も遠い位置にある友彦は藻屑の死を受けて変わっていく。この辺の対比は鮮やか。ネタバレ承知で書かせてもらうが、「死」というものの重さ、「死」というものの存在感をきっちりと描いており、ライトノベルということで敬遠してしまうにはもったいない作品といえよう。